シリーズがん教育①
文部科学省が「がんの総合支援事業」を開始全国70校がモデル校に
文部科学省は今年度から「がんの教育総合支援事業」を開始した。有識者による「がん教育の在り方に関する検討会」の設置や、全国21か所の道府県・指定都市などでモデル事業を行う。2012年6月に閣議決定された新たな「がん対策推進基本計画」で、5年以内にがん教育をどのようにするかを検討し、検討結果に基づく教育活動の実施が目標とされたことを受けての新事業だ。同事業の事務局を務める文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課の大西珠樹さんは今後の予定を「2016年度までの3年間で検討と実践を積み重ねた結果を報告書に取りまとめ、2018年度に予定される学習指導要領の改訂を視野に中央教育審議会に提出することを目指しています」と説明する。
モデル地域は立候補した所はすべて指定した。当初11地域ぐらいを想定していたが予想以上に希望が多く21か所になった。かなり早い段階から問い合わせてくる自治体もあり、ニーズの高さを実感しているという。モデル校には現在70校ほどが指定されており、学年では中学校、高等学校が多く、小学校が10校程度となった。
1年目の今年はがん教育の目的やあり方、対象学年の選定などの基本方針を検討し、全体のフレームワークを固める。2年目はその基本方針を踏まえて必要な教材の開発や、外部人材の活用についての検討を行う。並行してモデル地域でも教材の作製やそれを使用した授業や研修などのモデル事業を実施していく。3年目はモデル事業の成果と評価をもとに教材の改善、修正を行い、さらにモデル事業を実践しつつ報告書にまとめる。その結果、広く学校現場でがん教育を実践するために学習指導要領に落とし込めるようであれば記載していきたいとの考えだ。
大西さんは「どうしたらより多くの学校にがん教育に取り組んでもらえるかが一番の課題です」と語る。国が旗を振ったからと言って学校現場は簡単に実践できるものではない。学校現場からは教材や研修などの支援が欲しいとの声も多い。外部人材の活用などの支援策も今後検討会で討議していく。
「がん教育」の在り方に関する検討会(第2回)
9月29日、文部科学省(東京都千代田区)で第2回「がん教育」の在り方に関する検討会が開かれた。小学校や高等学校の教諭や教育委員会、PTAやがん経験者、医師や研究者やメディアといった様々な背景を持つ検討委員が、がん教育の目標や内容、位置づける教科やがん教育の進め方など8項目の論点について意見を出し合った。特に教科や実施する学年、進め方について熱心に討議された。学年については子どもの発達段階を踏まえて様々な意見が出たが、高校を卒業した段階でどんな知識を持っているべきかを想定して、内容や授業時間数を引き続き議論することとした。医師会や校医の活用など、外部人材の活用についても様々な提案がされた。
文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課の森良一教科調査官が「次回はモデル校などでの実践者のヒアリングを行い、それを踏まえて骨子を作って行きたい」と締めくくった。次回開催は11月を予定。
対がん協会報2014年10月号より