神奈川県立学校保健会横浜北部地区支部研修会
2017.7.11
講師:林和彦先生
人数:養護教員ら32人
「今、なぜ学校でがん教育が必要か」
――林和彦・東京女子医大教授が講演
神奈川県立学校保健会横浜北部地区支部研修会が7月11日、横浜市の神奈川県立白山高校で開かれ、「今、なぜ学校でがん教育が必要か」をテーマに林和彦・東京女子医科大学教授が講演した。研修会の開催には、日本対がん協会も協力し、養護教諭ら32人が参加した。
林教授は、がんの専門医としてがん患者や家族とかかわってきたなかで、数年前から、がん教育の必要性を感じ、各地でがん教育の出張授業を続け、この春には教員免許も取得した。
講演では、がんになった有名人が亡くなるとマスコミ報道によって「がんは死ぬ」と思われがちなることにふれながら、「毎年がんになる人は100万人を超えているが、死亡するのは37万人で、治る人が圧倒的に多い。このことが国民には浸透していない」と指摘。そのためにがんの啓発が必要と、数年前からがんの啓発活動を続けるうちに「学校でのがん教育は究極の啓発」と思いついたことを紹介した。
「がんについて知ってもらいたいのは、今がんにかかっていない人、がんになった人を支えていく世代。若い時からがんや命について考えてほしい」と、がん教育の必要性を語り、これまで小学校、中学校、高校で実施してきたがん教育の授業の様子もビデオで紹介。その中で、授業を受けた小学生の「がんは必ず死ぬ病気ではないと知り、安心した」などの感想も示しながら、「こうした子は大人になっても会社でがん患者を差別することはないでしょう」と語った。
また、授業を受けた中学生が親に授業のことを話したことで、今まで一度もがん検診に行ったことがなかった父親が検診に行くようになった例も示し、がん教育の効果を説明した。
さらにがん教育の授業を行った高校の生徒のアンケートで、授業前は「がんになると仕事や家事を続けるのが難しくなる」と65%が答えていたのが、授業後には28%になり、「難しくなるとは思わない」との回答が6%から39%に急増したことも紹介し、「この子たちが大人になったら社会が変わる」とも語った。