戦略研究報告

平成22年度の戦略研究報告
平成18年度から5年計画で始まった戦略研究は、平成22年度、計画の最終年度を迎えました。課題1、課題2ともに研究評価委員会で高く評価され、厚生労働省の指定研究として大内憲明・東北大学大学院教授、江口研二・帝京大学教授、両リーダーのもと、平成23年度から2年間の研究期間延長が認められました。なお、日本対がん協会は、研究開始以来5年間にわたり研究支援業務を担ってきましたが、当初計画通り、平成22年度をもって業務を終了、日本対がん協会に設置された「がん対策のための戦略研究推進室」は閉室いたしました。

課題1 乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験
研究の第1の目的である、超音波による乳がん検診の標準化と普及に関しては、平成22年度は、全国9会場で2日間にわたる講習会を実施しました。平成19年度のガイドライン策定後、累計で医師、技師ともに約2000人となり、超音波併用への基礎的な環境が整ったといえます。

比較試験では、参加者数は引き続き順調な伸びをみせ、累計では約7万5000人を数えることになりました。平成22年度は、平成20年度に新規登録した参加者の第2回目の受診も始まりました。日本で個別ランダム化比較試験が可能なこと、世界でも類をみない大規模な臨床試験が実現したことが高く評価されました。

課題2 緩和ケアプログラムによる地域介入研究
平成20年度から、1)緩和ケアの標準化と継続性の向上、2)患者・家族に対する適切な知識の提供、3)地域の緩和ケアの包括的なコーディネーション、4)緩和ケア専門家による診療、の4つを柱に行われた地域介入は計画通り平成22年度中に終了、介入後の「患者調査」「医療者調査」が始まりました。地域緩和プログラムとしては、国際的にも最大規模の包括的な評価となります。
1月に開かれた4地域合同意見交換会は、メディアにも公開され、4地域の医療福祉従事者が集まり、緩和ケア普及のための課題について活発な議論が交わされました。

今後2年間のフォローアップで、「専門サービスの利用数」「遺族調査」「死亡場所」などの介入後調査を行い、介入前と介入後の変化について、緻密なデータに基づいた解釈が可能となります。また、プログラムを実際に導入する過程を記述した「プロセスの記述」に基づいた研究から、課題と解決策の整理、地域で生じたことの質的評価などがまとめられます。これらの研究成果が、一般に広く普及されることが期待されます。