2020年08月26日
お知らせ
がん患者の新型コロナ重症化リスク
国際医療研究センターが、国内データを初公表
国立国際医療研究センターは2020年8月、国内の医療機関と共に行っている新型コロナウイルス感染症のレジストリ研究(観察研究)の中間報告を初めて公表しました。それによると、新型コロナウイルスに感染した固形がん患者が重症化する比率は、新型コロナウイルス感染者全体の重症化比率に比べると、日本国内でも高いことが分かりました。しかし、高血圧や糖尿病を併存する感染者の重症化比率とは大差なく、このデータをみた佐々木治一郎・北里大学病院副院長兼集学的がん診療センター長は「併存疾患別の重症化リスクについて、まとまったデータが出るのは国内では初めてだが、これをみても、がん患者の重症化リスクだけが特別高いわけではない」と話しています。
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がん患者が新型コロナウイルスに感染した場合の重症化リスク・死亡リスクについては、これまで海外のデータが用いられてきました。最もよく用いられるWHOと中国が発表した第一波のデータによると、新型コロナウイルスに感染したがん患者が死亡する比率は7.6%で、合併症がない感染者の死亡する比率1.4%に比べると、かなり高い割合になっていました。ただ同じ調査で、高血圧の感染者が死亡する比率は8.4%、心血管疾患患者の感染者だと13.2%、糖尿病患者の感染者だと9.2%で、がん患者の死亡する比率だけが特別に高いわけではないことも分かっていました。
今回、国立国際医療研究センターが公表した中間報告によると、解析したのは国内227施設の医療機関に入院していた新型コロナウイルス感染者2638人。このうち入院後、最悪の状況でも酸素不要で軽症だった人は1629人(61.8%)、酸素が必要だった人は784人(29.7%)、気管挿管したり体外式膜型人工肺(ECMO(エクモ))を使ったりした重症者は223人(8.5%)いました。
感染者2638人のうち固形がんを併存していた人が103人いました。この人たちが入院後、最悪の状況でも酸素不要だった人は39人(37.9%)、酸素必要は49人(47.6%)、気管挿管などを行った重症者は15人(14.6%)で、感染者全体の重症化の比率に比べると、固形がん併存者の重症化比率の方が高い結果となりました。
しかし他の併存疾患をみると、糖尿病を併存している感染者441人のうち挿管などの重症者は82人(18.6%)、高血圧だった感染者396人のうち挿管などの重症者は62人(15.7%)で、中国の結果と同様、国内でもがん患者の重症化率だけが特別高いわけではないことも分かりました。
この中間報告で重症の比率が目立ったのは慢性肺疾患の患者。特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)を患っていた感染者44人のうち9人(20.5%)は挿管やECMOを使わざるをえない状態になりました。
喫煙者は重症化しやすい
また、この中間報告では喫煙者の重症化リスクについても言及しています。新型コロナウイルス感染症患者のうち喫煙歴があったのは954人。この中で酸素不要だった人は519人(54.4%)だったのに対して、酸素を必要とした人は336人(35.2%)、挿管などの重症者は98人(10.3%)で、「喫煙者では重症化しやすい」と指摘しています。
国立国際医療研究センターはこのレジストリ研究を20年1月から始め、7月7日までに国内227の医療施設から登録があったデータを解析しました。