2020年10月14日
お知らせ
新型コロナ、特に巡回健診で大きな受診者減 日本対がん協会など3団体、厚生労働省に要望書を提出
日本対がん協会は、結核予防会と予防医学事業中央会と共に、「新型コロナウイルス感染症と健診事業に関するアンケート」を3団体の支部に対して実施し、その結果概要を2020年9月、まとめました。それによると、20年2~7月のがん検診や特定健診などの健診受診者は、施設健診では前年度の76.4%、巡回健診では56.4%に落ち込んだことが分かりました。支部からは、延期されたがん検診の実施と受診勧奨を求める声や財政支援を望む声が相次いでおり、日本対がん協会など3団体は10月16日、厚生労働省の正林督章健康局長に要望書(PDF 151KB)を出しました。
このアンケートは20年7~8月、3団体の支部のうち健診事業を行っている支部を対象に実施。がん検診や特定健診などを含めて、20年2~7月の健診受診者数の推移や健診の際の新型コロナウイルス感染防止策、感染防止器具の充足状況、支部の財政状況などを質問しました。3団体の支部合わせて計63団体から回答がありました。
施設健診は前年度の76%に
がん検診や特定健診などの受診者数については、自施設で行う施設健診と、検診車などによる巡回健診に分けて尋ねました。施設健診の受診者数については、前年度の80%台に落ち込んだという支部が17団体と最も多く、次いで70%台が15団体、90%台が10団体、60%台が9団体で、50%未満と答えた支部も4団体あり、平均すると前年度比76.4%となりました。
巡回健診は前年度の56%に
巡回健診の受診者数については、前年度の50%台という支部が18団体と最多を占め、50%未満が17団体、60%台が10団体、70%台が8団体、80%台が4団体と続き、平均56.4%となりました。施設健診に比べて巡回健診の落ち込み方が激しいのは、巡回健診の場合は自治体が実施する対策型がん検診や特定健診が多く、新型コロナウイルス感染防止のため、多くの自治体ががん検診や特定健診を取りやめたことが影響していると思われます。
感染防止マニュアルはほぼ整備
感染防止対策については、ほぼすべての支部が新型コロナウイルス用の対策マニュアルや、受診者やスタッフに感染者が出た時の対応策を整備しており、健診の際のソーシャルディスタンス確保、受診者の体調確認や検温を実施していました。受付や採血場所でのビニールカバーについても、大半の支部が設けていました。現金をやり取りする場合でも、手袋を用いたりトレーによる現金授受を徹底したりして、使用後はトレーをアルコール消毒している支部が目立ちました。
感染防止器具が足りているかどうかの質問に対しては、フェイスシールドについてはどの支部もほぼ確保できているものの、マスクについては「十分確保できている」が半数ほどで、「備蓄が十分とは言えない」と答える支部もありました。防護服についても「不足」という支部がありました。
支部収入、大きく減少
受診者の落ち込みは支部の財政状況に大きく影響しました。2~7月の支部の収入を前年度と比べたところ、70%台に落ち込んだと答えた支部が17団体と最も多く、60%台が16団体、50%未満が10団体、50%台が9団体、80%台が6団体、90%台が1団体で、前年度並みか前年度以上と答えた支部はゼロでした。
一方、2~7月の支出については、前年度の90%台と答えた支部が26団体と最多でした。健診中止で支出が減ったものの、新型コロナウイルス対策で出費がかさみ、収入ほどの減少にはならなかったようです。
休日健診や予約制導入で受診者増
アンケートでは、落ち込んだがん検診・特定健診などを今後受診してもらうための対策についても聞きました。「休日の健診を実施または予定している」と答えた支部は45団体あり、実施しないと答えた支部の18団体を大きく上回りました。「早朝の健診を実施」という支部も16団体ありました。
自由回答では、「検診に予約制を導入して、受診者の密をなくすと共に、これまで閑散期だった1~3月にも恒常的に受診できるようにする」「休日の受診受け付けのほか受付時間も拡大する」「コロナ対策を強調し、安心して受診できることを訴える」などの回答が目立ちました。また、「新型コロナ対策をチャンスととらえ、受診の待ち時間短縮などを継続したい」という回答もありました。
健診を実施する自治体・事業所数の推移については、多くの支部が今後は前年度割れを解消するとみており、半数以上の支部が、9月以降は前年度実績の100%以上で健診が実施できそうだと予測しました。
受診勧奨やマスクなどの安定的供給望む声
今後の要望事項としては、「特定健診やがん検診の積極的な受診勧奨」を望む声や、「特定健診やがん検診は重要なので、労働安全衛生法による健康診断と同様、必ず受診することを制度化してほしい」といった訴えがありました。また、新型コロナウイルス対策に伴う支出増に対する一層の財政支援、健診を滞りなく進めるための消毒用アルコール・マスク・ゴム手袋などの安定的供給のほか、「公益財団法人は収支相償の観点から原則として内部留保は認められていないが、不測の事態に備えて一定規模の内部留保を認めてほしい」という要望もありました。