2022年12月22日

お知らせ

【新年のご挨拶】2023年を迎えて 新たな課題へチャレンジ-がん検診研究、がん患者・家族への支援を拡充-

公益財団法人 日本対がん協会会長 垣添忠生

 

明けましておめでとうございます。
新型コロナウイルス感染症の蔓延による困難な状況は、変異株の登場もあり丸3年が経過した現在でもなかなか先が見通せない状況にあります。しかし、新しい気持ちで新年を迎えましょう。
 
日本対がん協会グループとして60年以上展開してきたがん検診事業もコロナ禍で大きな後退を余儀なくされました。現在、皆様の受診勧奨のご努力や予約制の導入などで少しずつ回復しつつあるとはいえ、2021年のがん検診受診者数はコロナ前の2019年と比べて10.3%減でした。これは本来発見されるべきがんが減ることを意味します。それは、多大な損失であり、個々人の人生に与える影響は甚大です。特に早期がんの発見が減少していることは、がんは当初は無症状であることの反映かもしれません。検診はその時期に介入することを目的とした医療行為であることを改めて想起させます。また、60歳以上のがん発見が減少していることも問題です。高齢で進行がんを抱えた人が増加するのではないかと危惧しています。
 
日本対がん協会グループのがん検診受診者数減のニュースは、我々だからこそできる迅速な情報発信であり、NHKはじめマスコミの注目を集めました。改めまして、ご協力いただいたグループのみなさまにお礼を申し上げます。当協会グループの存在意義に対する世の中の見方は確実に変わってきています。
 
わが国も含めて世界のがん対策は以下の4本柱で構成されています。すなわち、予防、検診、治療、緩和ケアです。なるべく医療費の増大を抑えながら国民をがんから守るには、予防と検診に注力することがもっとも合理的なアプローチだと私は考えています。
 
予防では、ワクチン接種と禁煙の重要性を忽(ゆるが)せにできません。特にHPVワクチンについては、2022年度から国が約9年ぶりに積極的な接種勧奨を再開しました。女性を子宮頸がんから守るうえで誠に喜ばしいニュースです。禁煙においても、タバコ産業のイメージ戦略に負けない、より訴求力の高い活動を行っていく工夫が求められるでしょう。
 
検診によるがんの早期発見は、年間に約100万人ががんとなり、約38万人が亡くなっている現状を考えますと、重要性がいや増します。2022年度はがん検診の無料デジタルクーポンを新たに発行し、特にこれまでがん検診を受けたことがない人、シングルマザーなど検診を受けにくい人などを配慮しながら告知し、感謝の言葉が寄せられています。秋から対象は五大がんに広げました。
 
医師として進行がんで亡くなる方々の悲劇を数多く目にしてきた私は、がん検診に対してはとりわけ強い思い入れがあります。加えて、私自身が大腸がんと腎臓がんを早期発見できたおかげで今日があるのです。
 
日本対がん協会グループにおいても、これからのがん検診には、人口減少と高齢受診者の増加、新しい検診技術の導入、支部データのデジタル化など、多くのチャレンジが待ち受けています。
 
治療ではゲノム医療の定着、新薬の開発や新技術の導入などは患者さんの希望に繋がります。問題は医療費の高騰が待ち受けていることで、予防と検診に注力することはわが国が世界に誇る国民皆保険制度を守るうえでも重要です。
 
また、今年はがんの基礎研究に対する研究助成金も増額し、研究費獲得に苦労しておられる研究者の皆様の少しでもお役に立てるよう計画しています。不幸にしてがんで亡くなられた方々の遺族に対する支援も新年度より開始したいと考えています。
 
日本対がん協会本部は一昨年11月、築地市場跡近くのコンパクトな事務所に移転しました。テレワークの定着を見据え、さらに事務所費用の縮減により貴重なご寄付を少しでも対がん活動に役立てるための決断でした。この移転は正解だったと思います。職員も慣れてきて、この新事務所を中心に本年はさらに対がん活動を充実させたいと考えています。
 
様々な新しい状況でスタートした本年が皆様にとって良き年になりますよう!