2023年12月26日

お知らせ

【新年のご挨拶】2024年を迎えて-新たな課題にもチャレンジし、対がん活動を一層進めましょう!-

公益財団法人 日本対がん協会会長 垣添忠生

 

明けましておめでとうございます。
新型コロナウイルス感染症の蔓延による困難な状況は、丸4年が経過し、漸く少し下火となり、状況の変化が見られるようになりました。新しい気持ちで新年を迎えましょう。
 
日本対がん協会グループとして60年以上展開してきたがん検診事業もコロナ禍で大きな後退を余儀なくされました。現在、皆様の受診勧奨のご努力や予約制の導入などで少しずつ回復しつつあるとはいえ、2021年のがん検診受診者数はコロナ前の2019年と比べて10.3%減でした。これは本来発見されるべきがんが減ることを意味します。それは、多大な損失であり、広い目で見れば国家としても、個々人の人生に与える影響も甚大です。特に早期がんの発見が減少していることは、がんが発生当初は無症状であることの反映かもしれません。検診はその時期に介入して、がんで亡くなる人を減らすことを目的とした医療行為であることを改めて想起させます。また、60歳以上のがん発見が減少していることも問題です。高齢で進行がんを抱えた人が今後増加するのではないかと危惧しています。
 
日本対がん協会グループのがん検診受診者数減のニュースは、我々だからこそできる迅速な情報発信であり、NHKはじめ多くのメディアの注目を集めました。当協会グループの存在意義に対する世の中の見方は確実に変わってきています。
 
わが国も含めて世界のがん対策は、予防、検診、治療、緩和ケアで構成されています。なるべく医療費の増大を抑えながら国民をがんから守るには、予防と検診に注力することがもっとも合理的なアプローチだと私は考えています。
 
予防では、ワクチン接種と禁煙の重要性を忽(ゆるが)せにできません。特にHPVワクチンについては、2022年度から国が約9年ぶりに積極的な接種勧奨を再開しました。女性を子宮頸がんから守るうえで誠に喜ばしいニュースです。しかし、現実にはワクチンの副作用に対する心配もあり、必ずしも接種者の増加に繋がっておらず、胸を痛めています。予防も早期発見も可能な子宮頸がんで年間3000人近くの女性が亡くなるという悲しい現実は、他の先進国では見られない現象です。
 
禁煙においても、タバコ産業のイメージ戦略に負けない、より訴求力の高い活動を行っていく工夫が求められるでしょう。
 
検診によるがんの早期発見は、年間に約100万人ががんとなり、約38万人が亡くなっている現状を考えますと、重要性がいや増します。2022年度からがん検診のデジタル無料クーポンを新たに発行し、特にこれまでがん検診を受けたことがない人、シングルマザーなど検診を受けにくい人などを配慮しながら告知し、感謝の言葉が寄せられています。この事業には引き続き力を入れていきたいと思います。

 
また、がん検診に特化した研究にも新たなに助成金を交付することとし、注目を浴びています。医師として進行がんで亡くなる方々の悲劇を数多く目にしてきた私は、がん検診に対してはとりわけ強い思い入れがあります。

 
日本対がん協会グループにおいても、これからのがん検診には、人口減少と高齢受診者の増加、新しい検診技術の導入、支部データのデジタル化など、多くのチャレンジが待ち受けています。日本対がん協会グループ一丸となって取り組みたいと願っています。

 
治療ではゲノム医療の定着、新薬の開発や新技術の導入などは患者さんの希望に繋がります。問題は医療費の高騰が待ち受けていることで、その意味で予防と検診に注力することはわが国が世界に誇る国民皆保険制度を守るうえでも重要です。

 
また、昨年からがんの基礎研究に対する研究助成金も増額し、研究費獲得に苦労しておられる研究者の皆様の少しでもお役に立てるよう継続しています。がん遺児に対する支援も「あしなが育英会」と連携して新年度も取り組んでいきます。

 
日本対がん協会本部は2021年11月、築地市場跡近くのコンパクトな事務所に移転しました。テレワークの定着を見据え、さらに事務所費用の縮減により貴重なご寄付を少しでも対がん活動に役立てるための決断でした。この新事務所を中心にリレー・フォー・ライフ(RFL)、ピンクリボン活動、サバイバー支援、がん相談ホットラインなど本年はさらに対がん活動を充実させたいと考えています。

 
様々な新しい状況でスタートした本年が皆様にとって良き年になりますよう!そして、当協会の活動に変わらぬ御支援をお願い申し上げます。