2024年07月05日
お知らせ
【がん検診デジタル無料クーポン 2023年度利用者アンケート】経済支援に加え、健康面の支援の必要性も浮き彫りに
日本対がん協会は2023年度に発行した「がん検診デジタル無料クーポン」の利用者を対象にしたアンケートの結果をまとめました。経済的支援に加え、健康に関する支援ニーズも高いことがわかりました。がん検診の受診率向上のためは、貧困対策も課題の一つであることが浮き彫りになりました。
がん検診デジタル無料クーポンは、コロナ禍で減少したがん検診受診者数の回復などを目的に、スマートフォンなどで手軽に取得できるよう従来の無料クーポン券(印刷物)をデジタル化したもので、2022年度から発行を始めました。
2023年度は、貧困世帯やひとり親家庭、非正規社員など、がん検診を受けたくても受けられない人たちを対象に支援団体や全国の健診(検診)団体と協働して無料クーポンを発行しました。また、NPOと連携して「がん検診セミナー」を開催したほか、対がん協会のグループ支部でも独自のキャンペーンを展開し、がん検診の受診率向上を図りました。
国が推奨する五つのがん検診(子宮頸部、乳房、肺、大腸、胃)について、計1767件の申請があり、1050件(59%)が使われました。このうち、貧困世帯やひとり親の支援団体を通じた申請は699件で、285件(41%)の受診に使われました。
アンケートは、クーポン利用者944人を対象に2024年4月に実施し、251人から回答を得ました。全体の利用状況をみると、「クーポン取得後にがん検診を予約・受診」は84%を占めました。また、「予約したが未受診」は5%、「予約も受診もしなかった」は11%でした。
貧困世帯やひとり親世帯の支援団体を通じた申請と、地域の健診(検診)団体を通じた申請に分けて見ると、前者は82%/4%/14%、後者は86%/6%/8%となりました。
受診しなかった理由では「予約時に都合の良い日時が取れなかったから」が34%、次いで「近所に便利な検診施設がなかったから」が26%でした。また、「予約方法が分かりづらかったから」「予約を忘れて期間が過ぎたから」が各8%ありました。
■無料クーポンの利用状況
過去の受診歴を聴いたところ、全体では「2年ぶりに受診した」が46%、「3年以上受けていなかった」が42%、「初めて受診した」は12%となりました。
また、貧困世帯やひとり親の支援団体を通じた受診者では、「2年ぶりに受診した」が43%、「3年以上受けていなかった」が42% になり、 「初めて受診した」は15%ありました。
【五つの検診別】貧困世帯やひとり親の支援団体を通じた受診者
このうち、五つの検診別に貧困世帯などの支援団体を通じた申請者の受診歴をみると、子宮頸がん42%/49%/9%▽乳がん45%/42%/13%▽肺がん38%/38%/24%▽大腸がん46%/35%/19%▽胃がん43%/41%/16%となりました。
受診者からは「費用がかかるため受けたくても受けられなかった。健康を害しては生活が成り立たない。このような機会を設けてもらい、ありがたい」「体に不安を感じつつ経済的な負担と日常の忙しさで検診は後回しだった。ひとり親で大病をしたら子どもを守れない。今後もこのようなご支援をいただけるとありがたい」「ずっと気になりながら検診に踏み切れなかったが、無料クーポン企画で初めて受診する気になった」などの声が寄せられました。
今回の結果から、経済的支援に加え、健康面での支援のニーズも高いことがわかりました。また、無料クーポン配布前にセミナーなどの啓発活動に取り組んだことで使用率は前年度から9ポイント上がりました。
無料クーポンが受診の動機付けになった半面、交通費も含めて検討して無料クーポン利用を見送ったケースもあり、貧困問題の深刻さも改めて浮き彫りになりました。また、「毎年支援してほしい」との要望も複数あり、貧困対策に健康面の支援も組み入れなければ受診率は向上しにくいという課題も見えました。