2025年11月13日
お知らせ
垣添忠生会長が2025年度の文化功労者に
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日本のがん医療やがん対策に長年尽力し、顕著な功績を上げたとして、日本対がん協会の垣添忠生会長(84)が令和7(2025)年度の文化功労者に選ばれました。泌尿器科学の分野で医療やがん研究に取り組み、膀胱がん患者のための新しい手術法を開発。がん患者の緩和ケアやホスピス医療の普及にも貢献したことが認められました。
文化功労者は、わが国の文化の向上のため、顕著な功績があった人を政府が顕彰するもの。1951年に制定され、2024年度までに996人が選ばれました。2025年度は垣添会長を含めて21人。11月4日に東京都内で顕彰式が行われました。
垣添会長は1941年、大阪市出身。1967年に東京大学医学部を卒業後、1975年から国立がんセンター病院(現国立がん研究センター中央病院)に勤務。手術部長、病院長、中央病院長などを歴任し、2002年から同センター総長を務めました。
この間、泌尿器科医として膀胱がんの基礎研究と臨床に努めました。膀胱がんに関しては、乳頭状がんから結節状がんに形態が移る過程を明らかにしました。また、がんによる膀胱全摘除手術の際、尿道を温存してもがんが再発する恐れのない条件を明らかにし、この条件に合う患者には、患者の腸から作った「新膀胱」を尿道に接合することで膀胱を全摘除した後も尿道から自然に排尿できる手術法を開発。1987年に男性では国内初、1992年に女性では世界初の手術に成功し、患者のQOL(生活の質)向上に貢献しました。
2003年には天皇陛下(現上皇さま)の前立腺がん手術に携わりました。また、国のがん対策の指針として、がんの死亡率や罹患率の低減をめざした第3次対がん10か年総合戦略に伴い、厚生労働省が設置した「がん検診に関する検討会」で座長を務め、がん検診の精度管理、有効性評価や新たな検診方法の導入、がん予防などを検討しました。
国立がんセンター総長時代の50代で大腸がん、60代で腎臓がんに罹患しましたが、いずれも早期がんで大腸がんは内視鏡手術による切除、腎臓がんは腎部分切除(楔状切除)で済みました。この経験から定期的ながん検診による早期発見の大切さを呼びかけています。
日本のがん対策の法的根拠となるがん対策基本法が施行された2007年、国立がんセンターを退職し、財団法人日本対がん協会(現公益財団法人)の会長に就任し、全がんの対策に取り組みました。一方で、同年12月、小細胞肺がんの治療中に一時退院した妻昭子さんを自宅で看取りました。それから数カ月間、深い悲しみに暮れましたが立ち直り、がん専門医とがん患者、がん患者家族・遺族という三つの立場の経験を生かして、がん患者とその家族や遺族の支援にも力を注いでいます。
日本対がん協会では2017 年、がん患者・家族らを支援する「がんサバイバー・クラブ」を立ち上げ、翌年に「がんサイバー支援ウオーク」と銘打ち、自ら全国がんセンター協議会に加盟する32病院(当時)を九州から北海道へ向けて約2500㎞を一筆書きのように訪ね歩きました。さらに、2021年には青森県八戸市から福島県相馬市にかけて東日本大震災の被災地をつなぐ約1000㎞の長距離自然歩道「みちのく潮風トレイル」を歩き、被災者やがん患者との交流を深めました。
これまでの経験は、「妻を看取る日」「悲しみの中にいる、あなたへの処方箋」「『Dr.カキゾエ黄門』漫遊記 がんと向き合って50年」など多くの著書、ドキュメンタリー映画「Dr.カキゾエ歩く処方箋 みちのく潮風トレイルを往く」に描かれています。
文化功労者に選ばれたことを受け、垣添会長は「誠に光栄であり、ありがたい」と話しています。
文部科学省ホームページ
令和7年度 文化功労者 一覧
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2025/attach/1422025_00002.htmopen_in_new
令和7年度 文化功労者顕彰式
https://www.mext.go.jp/b_menu/activity/detail/2025/20251104_2.htmlopen_in_new


