2026年01月06日

お知らせ

がん征圧全国大会記念シンポジウム「がん検診の新たな地平 組織型検診への移行の課題」組織型検診をテーマに議論


 
2025年度がん征圧全国大会の記念シンポジウム「がん検診の新たな地平 組織型検診への移行の課題」が、9月、神戸市内で開催されました。対策型検診の対象である5大がん検診の専門家や、がん検診関連施策を担う行政の責任者らが登壇しました。
 
演者(肩書は開催当時)は、国立がん研究センターがん対策研究所検診研究部特任部長の中山富雄氏、宮城県対がん協会がん検診センター所長の加藤勝章氏、東邦大学医学部消化器内科学教授の松田尚久氏、福井県済生会病院院長の笠原善郎氏、厚生労働省健康・生活衛生局がん・疾病対策課課長の鶴田真也氏、兵庫県保健医療部次長兼疾病対策課長の圓尾文子氏の6名です(講演順)。進行は、日本対がん協会がん検診研究グループの服部尚マネジャーが務めました。
 
がん検診は、がんを早期に発見し、適切な治療によってがんによる死亡を減らすことが目的。日本には、対策型検診と任意型検診があります。対策型は健康増進法に基づき、公共政策として自治体が住民に実施するもので、科学的根拠に基づき、胃、肺、大腸、女性の乳房、子宮頸部を対象に受診年齢や検査方法、受診間隔などが国の指針で定められています。また、自治体は受診状況などを把握することになっています。
 
一方、任意型は企業が福利厚生の一環で従業員に実施する職域検診、個人が人間ドックなどで受ける検診になります。法的な根拠はなく、がん検診として有効性が確立していない検査方法もあるほか、従業員や個人の受診状況を把握することが難しいという課題があります。
 
組織型検診は対策型をより精緻化した検診で、北欧や英国では子宮頸がんや乳がんの死亡率減少が認められています。有効性の確立した検診に加え、対象の明確化、高い受診率、精度管理体制の整備、受診者のモニタリングなどが求められます。
 
国の第4期がん対策推進基本計画では、がん検診の受診率をより正確かつ精緻に個人単位で把握する、また、がん検診を一体的に進められるよう、職域検診の実施状況の把握や、法的位置づけも含めたがん検診全体の制度設計を検討する、とされています。
 
厚生労働省は2025年7月、対策型検診の方法などを定めた「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」を改正。市町村が住民へ受診勧奨する際、職域検診の受診状況を集約することなどが盛り込まれました。
 
シンポジウムでは、中山氏が北欧や欧米で行われている組織型検診について説明しました。そのうえで責任のあるチームが運営することが重要であり、国全体で一つのチームをつくる必要があると指摘しました。
 
加藤氏は、胃X線検査と胃内視鏡検査について導入されている地域間の格差やその背景などを説明。検査方法や実施間隔の異なる二つの検査の一元的な管理について、課題に言及しました。
 
松田氏は、組織型検診のためには、一元化したデータ管理、個人データを把握する仕組みをつくる必要があり、そこに向かっていかない限り実現は難しいとの考えを示しました。
 

中山富雄 氏

加藤勝章 氏

松田尚久 氏

 
笠原氏は、対策型検診と任意型検診について、日本乳癌検診学会の全国集計をもとに乳がん検診の現状と課題を解説。組織型検診へ向け、任意型の検診施設では対策型と同様の体制整備、データ管理などが重要であると指摘しました。
 
鶴田氏は、誰がどの検診を受けているのかを管理する仕組みがなければ、効果的かつ効率的な受診勧奨は難しいとして、職域の状況も含めて市町村が把握することを目指した指針改正に言及しました。
 
圓尾氏は、組織型検診を兵庫県に導入する際の課題を指摘し、行政と医療機関とアカデミア、住民が一緒になって進める必要があると強調しました。
 

笠原善郎 氏

鶴田真也 氏

圓尾文子 氏

 
パネル討論の冒頭では、改めて日本での組織型検診へ向けて重要なポイントや課題が語られました。シンポジウムのより詳しい開催報告は、2025年12月発刊の対がん協会報増刊号にてご覧いただけます。