2013年11月14日
お知らせ
市民公開講座「障がい者も一緒に知ろう!がんのこと!」
場所:堺市立健康福祉プラザ
主催:堺市立健康福祉プラザ 市民交流センター,視覚・聴覚障害者センター
後援:国立がん研究センターがん対策情報センター
日本対がん協会
<音楽イベント「とどけよう!音楽のプレゼント」>11:00~12:00
賢明学院小学校金管バンド部による演奏と、視覚障がい者である安田知博氏による尺八演奏
小学生たちは「名探偵コナン・メインテーマ」や「テキーラ」(チャック・リオ作曲)などを熱唱。会場から大きな拍手がわきました。安田さんは「春の海」を演奏したり、楽しいエピソードとともにファミリーマートの入店を知らせる音楽や電車の発車メロディーなどを演奏してくださいました。とっても楽しいおしゃべりに会場は温かい雰囲気に包まれました。
それぞれによる演奏の後、小学生たちが安田さんに各楽器の特徴の説明をしたり、吹き方を教えるというデモンストレーションがありました。目が見えない人に楽器の構造を伝えるという初めての体験をした子どもたちは言葉で伝える難しさを感じながらも、とても楽しそうでした。
<市民公開講座「障がい者も一緒に知ろう!がんのこと」>
13:00~15:00
1、視覚障がい者のがん闘病記
健康福祉プラザ視覚・聴覚障害者センター所長 岩井 和彦氏
岩井さんは2005年に大腸がんが見つかり2度の手術と抗がん剤治療を繰り返してきましたが、2012年6月に余命1年と宣告されました。岩井さんは視覚障がいがあり、がんの情報を得る時にも治療法を決める時にも様々なご苦労や体験をしてこられました。今回、初めてその体験談とともに私たちへのメッセージや要望をご自身の言葉でお話ししてくださいました。以下は岩井様の原稿を元に記載させて頂いております。
●失明の原因
岩井さんは8歳の時に失明しました。原因は麻疹だと考えられ、岩井さんのご両親は自分たちの不注意で息子を失明させたと思いずっと苦しみ続けました。ところが2004年のある日、ひとつの大きな出来事がありました。何気なく読んでいた新聞紙に、ある女性の事が書かれていました。その女性は病院で処方された風邪薬を飲み、まもなく全身に発疹と高熱の激しい症状へと急変し、幸い命は取り留めたものの角膜は混濁し涙が全く出ないドライアイ状態に至ったのですが、昨今の再生医療の技術によって星が見えるほどに視力が回復したとのことでした。その女性の発症当時の様子が岩井さんと全く同じであることに驚き、同じ病院に行って診てもらいとやはり岩井さんも薬害であったことがわかったのです。「長きにわたって自らを責め続けてきた両親の苦しみは何だったのか!これまでの私の人生や家族の苦労はいったい何だったのか!」と激しい怒りを感じられたそうです。
●医師とのコミュニケーション
2005年頃、岩井さんは当時大きな関心を持っていた「テレビ放送のバリアフリー化」の実態調査のため、ヨーロッパ出張を間近にしていました。以前から便の検査で何度か潜血反応があったのですが、痔のせいだと思い二次検査を受けていなかったそうです。今回は思い切って二次検査を受けたので、結果を聞きに病院に行きました。すると、検査結果を聞きに来た岩井さんに対し、医師が「写真は見える人にしか説明できません。言葉で説明するのは誤解が生じますから。」と言いました。それまでも岩井さんは、目でしか確認できないことを言葉で補足してもらい、おおよそを理解することで、自分なりの判断をして生きてきました。今回もある程度説明をお聞きして、必要があれば写真を預かって帰り、家族と相談することもできると思っていました。ところが、医師が頑なに拒むので強引にでも写真を預かって返ることにしました。岩井さんはこの時のことを「久しぶりに見えないことでの悲哀を味わった興奮は収まりませんでした」と語ります。
それからしばらくして、偶然「声の文藝春秋」に大腸がんの特集を見つけました。何気なく聞いていると、自分の症状にそっくりであることから、「もしかして、大腸がんかもしれない」との疑いが頭をよぎり、預かっていた二次検査の結果の写真を持参して、再度消化器外科の診察を受けたのでした。そして、すぐに手術が必要と言われ、岩井さんは職場の近くの病院で治療することにしました。
その病院で岩井さんは素晴らしい医師との出会いをします。主治医となった医師は告知から最期までサポートすることを前提として、本人への正確な情報提供をしてくれました。情報を十分に伝えてくれたからこそ、自分で考えて自分で決めることができました。それから2度の手術を受け、化学療法(抗がん剤)を繰り返し、さまざまな副作用を経験しながら8年が経過しました。
●「情報はいのち」である
岩井さんは命に直結する病気であるがんを体験し、まさに 「情報はいのち」であることを痛感したのは全国視覚障害者情報ネットワークというインターネットの図書館を通じて、点字や音声の図書でがんに関する情報を手にした時でした。それまで「知識を得たい、知識は力なり」と思っても、書店や図書館に積み上げられたがんの本は目の見えない岩井さんには何の役にも立たなかったからです。
これら点字と音声の図書は、全国のボランティアの方々が大変な時間と労力を費やして作成してくださっているものです。がん告知を受けた時、「がんが転移して手術はできない。抗がん剤を使いましょうか」と問われた時、余命はあと1年と通告された時、岩井さんは眠ることも忘れてパソコンに向かい、情報を求めてキーボードを打ち続けました。「点字と音声の図書によって、さまざまな情報を検索することができたことで、どれほど精神的な安らぎを得ることができたでしょう。」と岩井さんは振り返ります。適切な情報を得ることによって、自分で治療方法を決めることができたそうです。医療現場では視覚や聴覚に障害のある人たちとの意思疎通がうまくいかない事例も多くあるのではないかと岩井さんは危惧しています。
●視覚障がい者に対するがんの情報発信
2010年10月から、堺市立健康福祉プラザ視覚・聴覚障害者センターと独立行政法人国立がん研究センターは、視覚障がんを持つ方へのがん医療情報の提供に関して協力・連携を開始し、2012年10月にはがん情報普及のための協定書を締結しました。
「広く国民に対するがんに関する情報の提供」「さまざまな理由により情報を得にくい環境にある人に対するがん医療および療養生活に関する情報の作成」において、両施設の機能を活用することで視覚障害のある全国のがん患者さんやそのご家族にタイムリーかつ正確な情報提供をすることが可能になります。岩井さんの夢は今、大きく動き始めています。
2、「知れば安心 がん情報」
国立がん研究センターがん対策情報センター長 若尾 文彦氏
若尾先生がいらっしゃる国立がん研究センターがん対策情報センターは現在、堺市立健康福祉プラザと協力して点字や音声によるがん情報を発信しています。その取り組みの内容やホームページの紹介、がんの原因や予防、がんになった時の相談場所などについてご講演くださいました。
以下より資料をダウンロードできます。
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「知れば安心 がん情報」